茶つみの里のよみもの
2025.10.06

\プロ直伝/ 美味しい緑茶の淹れ方

お茶は、淹れ方ひとつで驚くほど味が変わります。
せっかくいい茶葉を選んでも、温度や時間が合わないと渋くなったり、香りが立たなかったり。
今日は、茶専門店の私・中根が、ご家庭でも簡単にできる「美味しい緑茶の淹れ方」をお伝えします。

前提 ― 美味しいお茶は「水」から決まる

まず、忘れてはいけないのが「お水」です。
どんなに上質な茶葉でも、水が合わないとその持ち味は生きません。

緑茶に合うのは、軟水です。
市販のミネラルウォーターを使う場合は「軟水」と表示のあるものを選びましょう。
日本の水道水もほとんどが軟水なので、そのままでも問題ありません。

お水は必ず一度沸騰させてから使うのが鉄則です。
冷ましたお湯を使う場合も、一度沸騰させてカルキ臭を飛ばします。
これにより雑味が消え、柔らかく澄んだ味になります。

一度沸騰させることで水の硬度も下がり、茶葉のうま味がより引き出されるんです。
私は、こうした“ひと手間”こそが、お茶の深い味わいを生むと思っています。

お湯の温度 ― 香り・渋み・うま味のバランスを整える

次に大切なのは「温度」です。
お湯の温度が高いほど香りは立ちますが、同時にカテキンやタンニンが多く抽出されて苦味が強くなります。
逆に、温度が低すぎるとアミノ酸の抽出が不十分で、うま味が弱くなってしまいます。

つまり、温度はお茶の性格を決める“指揮者”のような存在です。

目安としては、

  • 一般的な煎茶:85℃前後
  • 深蒸し茶:80℃前後
    がもっともバランスの取れた温度だと感じます。

お湯の温度を調整する簡単な方法があります。
沸騰したお湯を一度湯呑に注いでから急須に戻すと、器を移すたびに約10℃ずつ温度が下がります。
これで、自然に最適な温度に調整しましょう。

お湯の温度が高くなるほど渋みが増します。渋みを強くしたい場合は少し温度の高いお湯を注ぎましょう。

また、よくあるのが、熱湯をそのまま注いでしまうこと。香りは立ちますが苦味が出てしまい、「あれ、いつもより渋いな」と感じる原因になります。「いつもの温度」の感覚を身につけておきたいですね。

急須選び ― 茶葉に合った道具を使う

緑茶の味を決めるのは茶葉だけではありません。
実は、急須の形や網の種類も大きく影響します。

当店で扱う「深蒸し茶」は、蒸し時間が長いため茶葉が細かく、粉のような状態です。
そのため、目の細かいステンレス網が取り付けられた“深蒸し専用急須”をおすすめしています。

\オススメポイント/

急須の網は「帯形状」よりも注ぎ口に網が取り付けてあるタイプがおすすめ!
抽出の際に茶葉が一か所に集中するため、
いちばん美味しい最後の一滴を絞り出すことができます!

ここがポイントです。
お茶のうま味は“最後の一滴”に凝縮されています。

お茶の旨味は、この「最後の一滴」に凝縮されています。
私はここを“黄金の一滴”と呼んでいます。

それでは早速淹れてみましょう。

茶葉と急須、湯呑(3人分)を用意します。
湯呑3杯分で茶葉は6gです。大さじ1杯で約6gです。急須に茶葉を入れます。

沸騰させたお湯を湯呑3つそれぞれに八分目ほどまで入れて湯冷ましします。
お茶の抽出の適温は約80℃ですが、器に入れるごとに約10℃下がります。
湯呑→急須の工程で概ね適温で抽出できます。

また、一度湯呑に入れることで湯呑に保温がされることと、
湯量が適量となり最後の一滴まで注ぎきることができます。

湯呑に移したお湯を急須へ静かに注ぎ、蓋をして30秒待ちます。

3つの湯呑に均一になるように少しずつ順番に注いでいきます。
後に注がれるほど濃くなりますので、『少しずつ順番に。』です。
お茶は最後の一滴にうま味が凝縮されています。
かならず急須に入れたお湯は最後まで注ぎきるようにしましょう。

\ワンポイント/

二煎目からは出が早いので、熱めのお湯を入れてすぐに注ぎましょう。
また、二煎目を淹れ終えたら、急須のフタは開けたままにして、熱を逃がすようにしてください。
蓋をしたままだと茶葉が蒸れてしまい、二煎目の美味しさが半減します。

ティーバッグタイプも基本は同じ。
同じ要領で、抽出後紐を上下に揺すってしっかり抽出するようにしましょう。

補足:味の違いを楽しむコツ

・一煎目はうま味と香り
・二煎目は軽やかな渋み
・三煎目はすっきりとした余韻

同じ茶葉でも、温度と時間でまるで違う表情を見せてくれます。
これは“生きたお茶”ならではの楽しみ方です。

水出し緑茶 ― 冷たい一杯で味わうまろやかさ

暑い季節に人気なのが「水出し緑茶」。
低温でゆっくり抽出することで、苦味が少なく、甘みが引き立ちます。
実は私も夏場は毎朝、冷蔵庫に水出しを仕込んでいます。

作り方(基本)

  1. 茶葉10gをボトルまたはティーバッグに入れる
  2. 冷水500mlを注ぐ
  3. 冷蔵庫で3〜4時間置く
  4. 軽く振ってから注ぐ

時間がない場合は氷水でもOK。
一晩置けば、さらにまろやかな味になります。

水出しの魅力と注意点

水出しでは、アミノ酸(テアニン)が多く抽出されるため、
お湯で淹れるよりもまろやかで甘みが際立ちます。
また、カフェインの抽出量が抑えられるため、
お子様や夜のリラックスタイムにもおすすめです。

ただし、必ず冷蔵保存し、24時間以内に飲み切るようにしてください。
茶葉の再利用や室温放置は避けましょう。

ちょっとしたアレンジ

・レモンやミントを加えて爽やかに
・梅干しを入れて「和の冷茶」に
・ほうじ茶や玄米茶でも同じ要領で楽しめます

お茶の世界は自由です。
その日の気分や体調に合わせて、いろいろ試してみてください。

美味しい淹れ方で、美味しいお茶をぜひ飲んでみてください。

お茶は技術よりも「心」。
丁寧に淹れる時間こそが、自分を整える時間でもあります。
どうぞ今日も、あなたらしい一杯をお楽しみください。