\プロ直伝/ 美味しい緑茶の淹れ方

お茶は、淹れ方ひとつで驚くほど味が変わります。
せっかくいい茶葉を選んでも、温度や時間が合わないと渋くなったり、香りが立たなかったり。
今日は、茶専門店の私・中根が、ご家庭でも簡単にできる「美味しい緑茶の淹れ方」をお伝えします。
前提 ― 美味しいお茶は「水」から決まる
まず、忘れてはいけないのが「お水」です。
どんなに上質な茶葉でも、水が合わないとその持ち味は生きません。
緑茶に合うのは、軟水です。
市販のミネラルウォーターを使う場合は「軟水」と表示のあるものを選びましょう。
日本の水道水もほとんどが軟水なので、そのままでも問題ありません。
お水は必ず一度沸騰させてから使うのが鉄則です。
冷ましたお湯を使う場合も、一度沸騰させてカルキ臭を飛ばします。
これにより雑味が消え、柔らかく澄んだ味になります。
一度沸騰させることで水の硬度も下がり、茶葉のうま味がより引き出されるんです。
私は、こうした“ひと手間”こそが、お茶の深い味わいを生むと思っています。
お湯の温度 ― 香り・渋み・うま味のバランスを整える
次に大切なのは「温度」です。
お湯の温度が高いほど香りは立ちますが、同時にカテキンやタンニンが多く抽出されて苦味が強くなります。
逆に、温度が低すぎるとアミノ酸の抽出が不十分で、うま味が弱くなってしまいます。
つまり、温度はお茶の性格を決める“指揮者”のような存在です。
目安としては、
- 一般的な煎茶:85℃前後
- 深蒸し茶:80℃前後
がもっともバランスの取れた温度だと感じます。
お湯の温度を調整する簡単な方法があります。
沸騰したお湯を一度湯呑に注いでから急須に戻すと、器を移すたびに約10℃ずつ温度が下がります。
これで、自然に最適な温度に調整しましょう。
お湯の温度が高くなるほど渋みが増します。渋みを強くしたい場合は少し温度の高いお湯を注ぎましょう。
また、よくあるのが、熱湯をそのまま注いでしまうこと。香りは立ちますが苦味が出てしまい、「あれ、いつもより渋いな」と感じる原因になります。「いつもの温度」の感覚を身につけておきたいですね。
急須選び ― 茶葉に合った道具を使う
緑茶の味を決めるのは茶葉だけではありません。
実は、急須の形や網の種類も大きく影響します。
当店で扱う「深蒸し茶」は、蒸し時間が長いため茶葉が細かく、粉のような状態です。
そのため、目の細かいステンレス網が取り付けられた“深蒸し専用急須”をおすすめしています。
\オススメポイント/
急須の網は「帯形状」よりも注ぎ口に網が取り付けてあるタイプがおすすめ!
抽出の際に茶葉が一か所に集中するため、
いちばん美味しい最後の一滴を絞り出すことができます!
ここがポイントです。
お茶のうま味は“最後の一滴”に凝縮されています。
お茶の旨味は、この「最後の一滴」に凝縮されています。
私はここを“黄金の一滴”と呼んでいます。

それでは早速淹れてみましょう。
茶葉と急須、湯呑(3人分)を用意します。
湯呑3杯分で茶葉は6gです。大さじ1杯で約6gです。急須に茶葉を入れます。
沸騰させたお湯を湯呑3つそれぞれに八分目ほどまで入れて湯冷ましします。
お茶の抽出の適温は約80℃ですが、器に入れるごとに約10℃下がります。
湯呑→急須の工程で概ね適温で抽出できます。
また、一度湯呑に入れることで湯呑に保温がされることと、
湯量が適量となり最後の一滴まで注ぎきることができます。
湯呑に移したお湯を急須へ静かに注ぎ、蓋をして30秒待ちます。
3つの湯呑に均一になるように少しずつ順番に注いでいきます。
後に注がれるほど濃くなりますので、『少しずつ順番に。』です。
お茶は最後の一滴にうま味が凝縮されています。
かならず急須に入れたお湯は最後まで注ぎきるようにしましょう。

\ワンポイント/
二煎目からは出が早いので、熱めのお湯を入れてすぐに注ぎましょう。
また、二煎目を淹れ終えたら、急須のフタは開けたままにして、熱を逃がすようにしてください。
蓋をしたままだと茶葉が蒸れてしまい、二煎目の美味しさが半減します。
ティーバッグタイプも基本は同じ。
同じ要領で、抽出後紐を上下に揺すってしっかり抽出するようにしましょう。
補足:味の違いを楽しむコツ
・一煎目はうま味と香り
・二煎目は軽やかな渋み
・三煎目はすっきりとした余韻
同じ茶葉でも、温度と時間でまるで違う表情を見せてくれます。
これは“生きたお茶”ならではの楽しみ方です。
水出し緑茶 ― 冷たい一杯で味わうまろやかさ
暑い季節に人気なのが「水出し緑茶」。
低温でゆっくり抽出することで、苦味が少なく、甘みが引き立ちます。
実は私も夏場は毎朝、冷蔵庫に水出しを仕込んでいます。

作り方(基本)
- 茶葉10gをボトルまたはティーバッグに入れる
- 冷水500mlを注ぐ
- 冷蔵庫で3〜4時間置く
- 軽く振ってから注ぐ
時間がない場合は氷水でもOK。
一晩置けば、さらにまろやかな味になります。
水出しの魅力と注意点
水出しでは、アミノ酸(テアニン)が多く抽出されるため、
お湯で淹れるよりもまろやかで甘みが際立ちます。
また、カフェインの抽出量が抑えられるため、
お子様や夜のリラックスタイムにもおすすめです。
ただし、必ず冷蔵保存し、24時間以内に飲み切るようにしてください。
茶葉の再利用や室温放置は避けましょう。
ちょっとしたアレンジ
・レモンやミントを加えて爽やかに
・梅干しを入れて「和の冷茶」に
・ほうじ茶や玄米茶でも同じ要領で楽しめます
お茶の世界は自由です。
その日の気分や体調に合わせて、いろいろ試してみてください。
美味しい淹れ方で、美味しいお茶をぜひ飲んでみてください。
お茶は技術よりも「心」。
丁寧に淹れる時間こそが、自分を整える時間でもあります。
どうぞ今日も、あなたらしい一杯をお楽しみください。
